どこか懐かしい!昭和レトロに癒される伊東の名所「東海館」

今回ご紹介する伊東でお薦めの場所は、伊東市が運営する文化施設「東海館(とうかいかん)」です。

私が伊東に移り住むことになったのはレトロで洗練された「東海館」を訪れたのがきっかけで、この街に温かみと魅力を感じるようになったからです。

伊東駅からアーケード街をゆっくり歩くこと10分、松川に沿って立ち並ぶ旧旅館街に「東海館」はあります。

伊豆の暮らしに興味がある方は、ぜひ東海館に来てみることをお勧めします。

東海館とは

湯の街・伊東に相応しい外観や温泉施設、歴史資料を公開している部屋や木工美術品の展示スペース、それに喫茶室まであって、伊東の街を知るのには絶好のスポットなのです。

昭和初期からの代表的な老舗旅館だった建物が伊東市に寄贈され、この街の温泉や歴史を知ることのできる文化施設としてリニューアルしたのが現在の「東海館」です。

東海館内を歩く

では、さっそく館内を巡ってみましょう。

まず受付で、入館料200円を払いチケットと案内パンフレットを受け取ります。

順路に沿って旅館当時の客室を巡ってゆきます。

この日は伊東在住と思われる60代くらいの老夫婦が私の前の廊下を歩いています。

「伊東にこんなレトロでモダンな旅館があったのね」

「知らなかったね。ここへ移ってきてもう8年にもなるのに」

「すてきな場所、いいところ再発見だわ」

こんな会話を交わしながら時々足を止めて客室の中を覗き込んでいます。

東海館1階

レトロだけど建具や調度品にどこか気品を感じる部屋が並んでいます。

特に中庭が見える客室の板の間はしばし椅子に腰を降ろしたくなるほど安らぐ空間なのです。

それもそのはず、この東海館は材木商だった稲葉安太郎氏によって1928年に造られた建築物です。

客室などに使用される銘木・奇木と、建具や細部の意匠に当時の職人の力量をみることになります。

東海館2階

板張りの階段を2階に登ると、江戸時代の初期、伊東に滞在していたと伝えられる三浦按針(みうらあんじん)(ウイリアムアダムス)をはじめ、伊東にちなむ偉人の足跡を観ることができます。

三浦按針は、イギリスからの渡来人で1601年頃、徳川家康の命により伊東の松川の河口に造船所をつくり、日本初の洋式帆船サン・ブエナ・ベンツーラ号を建造した人物です。

2023年に放送されたNHk大河ドラマで村雨辰剛さんが演じた毛むくじゃらの人物が三浦按針でしたね。

無口で髭が伸び放題、そんな印象の人でしたが、実は家康の知恵袋だったのですね。

この帆船は、スペインのフィリピン総督ドン・ロドリゴ・ビベロたちが上総国(かずさのくに)岩和田村の沖で遭難し漂着した際に、メキシコまで太平洋を渡って帰る船として家康によりロドリゴに渡されたのです。

後に国際親善に寄与したその恩賞として三浦按針は家康から250石の横須賀にある土地を領地として与えられています。

そして毎年8月、今でも続く按針祭(あんじんさい)の時、伊東港で打ち上げられる花火は伊東の夏の風物詩となっています。

その帆船のレプリカや三浦按針の肖像が松川の河口にも飾られています。

さらに2階奥のブースにやってくると、伊東在住の彫刻家・重岡建治さんが創作した木造彫刻が展示されている広いスペースの部屋になります。

重岡謙治さんは日本を代表する現代アートの巨匠で、作品は静岡市葵区の駿府城公園や東日本大震災の被災地である福島県飯舘村や宮城県気仙沼市にも展示されています。

さらに重岡謙治さんはJOCスポーツ賞のトロフィーを長年にわたってデザイン・製作していて、それは受賞した多くのアスリートの誇りとなっています。

東海館3階

さらに階段を登り、3階に辿り着くと、大広間が広がっていました。

ここでは雛祭り展が開催され、華やかな飾り雛が大広間の約半分のスペースを占めていました。

東海館4階

最上階は展望スペースです。

伊東市街や伊東港に係留された船までもが眼下に眺められる特等席。

この日は曇天で眺めは残念でしたが、旧市街に流れる松川のせせらぎは聞こえて来ました。

先程、1階の廊下で前を歩いていた老夫婦とここで再会し、4階の展望室からの眺めを聞いてみると、

「爽やかな春の風が吹き抜けて素晴らしい!」とこの場所の開放感に感嘆していました。

東海館の温泉

ひと通り廊下を歩き終わったら温泉に入ってみましょう。

漫画「テルマエロマエ」では主人公の実家が営む旅館の風呂として登場するタイル張りの豪奢な温泉です。

土日祭日のみ入浴できます。
こちらは別料金で500円。

東海館の喫茶

最上階まで館内を歩いて巡り温泉にも入浴したら、1階の喫茶室で軽食や甘味をいただきましょう。

伊豆の地に来たら飲み物はやはりお茶がおすすめです。

伊東では深入り茶のぐり茶が名物です。一度味わってみてください。

現在、東海館では宿泊はできませんが、隣接した民営のケイズハウスには泊まることができます。外観も部屋も「東海館」とほぼ同時期の建物なので昭和レトロを味わえます。

料金はとてもリーズナブルで予約が取れればお得です。

東海館
住所:静岡県伊東市東松原町12-10
アクセス:伊豆急行線「伊東駅」徒歩約7分
電話番号:0557-36-2004
営業時間:9:00~21:00(最終受付20:00)
定休日:毎月第3火曜日(祝祭日の場合は翌日と1月1日)
駐車場:無し(なぎさ公園の有料駐車場が利用できます)

※記載情報は取材当時のものです。変更している場合もありますので、ご利用前に公式サイト等でご確認ください。