毎年10月開催 重さ60キロの万灯を振り回す漁師の祭り 「川奈の万灯(まんどう)」

名門川奈ゴルフコースと美しいビーチ、いるか浜のある伊東市川奈。
ここは古くから漁師町として栄えてきた集落です。

その川奈地区では毎年10月に川奈の万灯という独特のお祭りが開かれます。
お祭り最大の見どころは、重さ65キロという万灯を持ち上げて、振り回し、海の安全と豊漁を祈願することです。

今回は小さいながらも見どころ満載の川奈の万灯祭りをご紹介します。

お祭りの当日は川奈の集落がソワソワ

伊東市川奈は夏の観光シーズン以外は静かなところですが、10月の川奈の万灯の時は集落全体が朝からソワソワしています。

海沿いの道や建物には紅白の垂れ幕がかかり、飾り付けも施されます。
住民の方々も朝から法被姿で食事やお酒の用意をして忙しそうです。

創建は平安時代 頼朝ゆかりの川奈三島神社

川奈漁港のすぐ近くには、三島大社の分社である川奈三島神社があります。
小ぢんまりとした神社ですが、その創建はなんと1188年、平安時代からある歴史の深い神社です。

伊豆に流刑となっていた源頼朝は三島大社の創建に伴って、この川奈に分社を作ったのが始まりだと言い伝えられています。

その神社の例祭が毎年10月におこなわれる川奈の万灯祭りです。

三つの町会がそれぞれに山車と万灯と若衆を出す

こちらは祭りの目玉の一つ、山車です。
川奈には小浦、宮町、東町の三つの町内会があり、それぞれに山車と神輿、そして万灯があります。

写真は小浦町内会の山車です。
飾り付けられた山車の中には子どもたちが乗っていて、お祭りの太鼓や笛を奏でながら町内を回って行きます。

この子どもたちが乗る山車は本当に可愛らしくて、お祭りの見どころのひとつです。

重さ60キロの万灯を振り上げて練り歩く

そしてこちらがお祭りの目玉、万灯です。
江戸の火消しが使ったような纏(まとい)を大きくしたようなもので、高さは3メートル、上に大きな飾りがついています。

万灯の重さは60キロ、これを一人で担いで練り歩きます。

川奈に古くから住む漁師さんに聞いたことがあるのですが、昔の万灯はもっと重かったそうで30貫(110キロ)もあったそうです。

これを持ち上げるだけでも相当な力が必要ですが、持って歩くのはさらに大変です。
お祭りの前に担ぎ手たちは練習をしてから臨むそうです。

立体絵巻が描かれた万灯

こちらは宮町の万灯を近くから撮ったものです。
扇形の飾りはなんと、絵ではなく立体です。

掘ったのかそうでないのか詳しいことは分かりませんが、三つの万灯にそれぞれ物語を表しています。

宮町も万灯は絵柄からして、源頼朝が川奈を訪れた時の場面ではないかと思います。

力自慢の漁師たちの胆力が試される

この万灯を交代で担いで集落を練り歩きます。
見るからに重そうな万灯を持ち上げる漁師さんたちの力にも驚きます。

川奈の男たちにとって、万灯を落とさずに持ち上げることは男としての儀式のようなもので、誰ひとり落とすことなく持ち上げて、振り回します。
腕力もすごいですが、その胆力に感動しました。

これまた余談ですが、前述の漁師さん曰く、昔は万灯の持ち手は横から蹴られるなど周りからイタズラされたそうです。
万灯を落とすことはお祭りにとって絶対的なタブーですから、本当に大変だったそうです。

お神輿ごと海へ入るクライマックス

そしてお祭りの三つ目の目玉がお神輿です。
白い法被に褌、足袋を着けた若衆が神輿を担いで川奈を練り歩きます。

川奈は坂道と細道が多く、重たい神輿を担いで歩くだけでも相当大変だと思います。
そしてクライマックスは神輿を担いだまま海に入って清めるという儀式です。

私の知人が昨年のお祭りの担ぎ手をやっていたのですが、お神輿だけでも相当重いのに、それが水に浸かると重さが倍増するそうです。

お神輿はいるか浜、漁港と数箇所の海に入って行きます。
もちろんお神輿を落とすなんてことは許されませんから、若衆たちも必死の形相です。

最後は階段を上がってお神輿を奉納

写真が遠くからのもので恐縮ですが、海から上がったお神輿は最後に川奈三島大社に戻ります。
神社はちょっとした高台にあって、その階段を上がるのも担ぎ手にとっては相当きついはず。
それでもお祭りの締めということで必死に階段を上がって行きます。

お神輿を担いで上がってあと一歩というところで、上からまだまだと押し返されます。
押し戻されてもまた登る、それを何度か繰り返してやっとお神輿を奉納できるそうで、昨年の担ぎ手だった方の話では、最後が一番大変だということです。

ちなみに神社内には酒席が用意されていて、担ぎ終わった若衆たちはみんなから労われていました。

川奈の集落が活気にあふれる1日

今ではすっかり珍しくなった力自慢を前面に出しているのが川奈の万灯祭りです。
川奈は小さな集落ですが、お祭りの時は集落全体が盛り上がって活気に満ちています。

出店なども出て大人から子どもまで楽しめるお祭りです。

2024年は10月20日午前11時から始まります。
全国的にも珍しい川奈の万灯祭り、機会があったらぜひ訪れてみてください。

川奈の万灯
住所:静岡県伊東市 川奈三島大社ほか
アクセス:伊豆急行線「川奈駅」から徒歩約20分、またはバスで約15分(川奈港下車)

※記載情報は取材当時のものです。変更している場合もありますので、ご利用前に公式サイト等でご確認ください。